第四紀研究
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2010年度日本第四紀学会賞受賞記念論文
日本海堆積物と東アジア・モンスーン変動-IODP日本海・東シナ海掘削に向けて-
多田 隆治
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2012 年 51 巻 3 号 p. 151-164

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抄録

1989年のODP日本海掘削は,日本海第四紀堆積物が数百~数千年スケールで繰り返す明暗互層によって特徴づけられ,何らかの過程を通じて半球規模の急激な気候変動と連動していることを示した.その後の研究は,明暗互層堆積の制御要因が対馬海峡を通じた栄養塩フラックス変動であり,それは南中国における夏季モンスーン降水変動を反映していることを明らかにした.日本海堆積物中の風成塵供給源変動の研究は,明暗互層に対応して供給源がタクラマカン砂漠とゴビ砂漠間で変動し,亜熱帯偏西風ジェット軸の南北振動を反映することを示した.これは,東アジア夏季モンスーンが偏西風ジェットを通じて北大西洋の気候とリンクしていることを示唆する.日本海堆積物は,こうした変動がいつ始まり,時代とともにどのように変化してきたかを記録している.2013年夏にはIODP日本海再掘削が計画されており,急激な気候変動の究極原因や増幅,伝播メカニズムが解明されると期待される.

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© 2012 日本第四紀学会
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