人類が前例のない人為的気候変動や生態系サービスの破壊に直面している現在,考古学は社会・生態システムのレジリアンス(回復力)を高める戦略を,どのように構築すればよいだろうか.考古学は,近年までこの重大な問題について取り組んでこなかった.本論では,まず日本の考古学が人間活動および文化と生態系との関係をほとんど研究してこなかった理由について,検討する.次に,安田喜憲の研究を例に挙げ,日本の考古学の歴史的発展が人間と自然環境のかかわりに関する研究に障害となってきたことを主張する.最後に,レジリアンスを基盤とし,社会・生態システムを計画管理する際のおもな要素をまとめ,その管理のために有効な考古学的戦略を10点提案する.