テフラは,地層中の時間基準となり,さまざまなクロスチェックに役立つ.本論では,環太平洋におけるいくつかの研究例を紹介し,テフラ編年学の多様な役割について述べる.白頭山苫小牧テフラは, 14Cウイグルマッチングと年縞編年をクロスチェックした良い例である.琵琶湖や水月湖などのように湖成層中のテフラは,年縞編年と14C年代の比較から正確な暦年を与えることができ,堆積速度の見積もりにも役立つ.乾陸上でのテフラ層は,ローム/土壌層などの連続的な集積によって保存され,アリューシャン列島では完新世に限られる.熱帯のフィリピンでは,風化速度が速いためにテフラ層として保存されにくいが,イロシン火砕流のco-ignimbrite ashは,堆積直後に降下スコリアで覆われたため,保存された.種子島では,種IIと種IVテフラの14C年代との比較から,ローム層の堆積速度は一定ではないと考えられる.潜在テフラは,層序の精密化に貢献するが,鬱陵隠岐テフラが鬱陵島のU-4に対比できる例が示すように,年代・層序とのクロスチェックが必要である.