モグラの巣穴掘り活動が遺跡に与える影響について,茨城県稲敷郡美浦村陸平貝塚を対象に検討した.まず,モグラが移動できる物体のサイズを明らかにするために,現生モグラ塚の調査を行い,モグラによる遺物選別パターンを観察した.その結果,モグラによる擾乱によって,最大長5 cm未満の遺物の一部は地表と地表浅部を往復し,5 cm以上の遺物は沈下することが予想された.次に,モグラによる擾乱を出土遺物のサイズから評価するために,陸平貝塚DNo.3トレンチにおいて,深度ごとの出土遺物サイズの計測を行った.その結果,貝塚堆積後に形成された堆積土壌において,遺物がモグラによって垂直的に再配置されている可能性が示唆された.モグラによる動物擾乱などの生物擾乱は,日本列島の完新世における遺跡形成過程の一部を担っている.それゆえ,生物擾乱の評価は遺物空間配置を議論する上で重要である.