海洋における一次生産者としてその動態が環境に大きな影響を与える珪藻群集を,堆積物中の遺骸からできるだけ忠実に再現するために,超音波印加による簡便な処理法を考案した.動物の糞粒(fecal pellet)が主体である集塊が容易に泥化し,かつ珪藻殻の破壊による消失が認められないことから,超音波印加は珪藻分析において有効な処理法であることを示した.また,従来の処理方法である過酸化水素処理を行った同一試料の珪藻遺骸群集と比較した結果,過酸化水素処理ではデカンテーションの過程において除去した上澄みとともに流出する可能性のある小型の分類群を,超音波印加処理を用いることで忠実に計数できることが明らかになった.さらに,超音波印加処理を行った試料の集塊(糞粒)と基質部分(細粒分)の珪藻遺骸群集の違いから,化石としては保存されない一次消費者の動態の一部を堆積物から明らかにしうる可能性を指摘した.