第四紀研究
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論説
貝形虫群集を用いた中海における過去1,700年間の古環境変遷
山田 桂増馬 鉄朗瀬戸 浩二
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2015 年 54 巻 2 号 p. 53-68

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抄録

過去1,700年間を対象に,中海湖心部のコアから産出した貝形虫群集の変化を検討した.139試料から20属34種の貝形虫が産出した.優占種から,中海は総じて水深5〜10mの内湾あるいは汽水湖であったことが示された.また,Qモードクラスター分析に基づく貝形虫相の時間変化から以下の環境変遷が読み取れた.300〜1100年には塩分25〜30の内湾が存在した.1100年頃に塩分20〜30の汽水湖になり,この汽水湖は現在まで続いている.また,1800〜1900年は一時的に外洋水の流入量が増加したこと,過去100年間は湖心の底層は多くの貝形虫が生息できない貧酸素環境であったことが推察された.古文書の記録と比較すると,弓ケ浜半島先端部が島(夜見島)を形成していた環境は400年以前に始まり,1100年頃に終了したと考えられる.1100年の内湾から汽水湖への変化の時期は,東アジアの気候変動の時期と一致しないことから,汽水湖に至った変化は弓ケ浜先端部の砂州の発達によって引き起こされたと考えられる.

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© 2015 日本第四紀学会
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