第四紀研究
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論説
OSL強度より推定された天竜川~遠州灘海岸における砂粒子の運搬-堆積過程
白井 正明林崎 涼劉 海江佐藤 愼司
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2016 年 55 巻 3 号 p. 107-118

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抄録

河床と海浜の侵食が著しい天竜川下流~遠州灘沿岸域において,過去数10年間の砂粒子の運搬-堆積過程を評価するために,アルカリ長石粒子の光ルミネッセンス(OSL)強度を測定し,それを基に試料中に含まれる最近露光した粒子の含有率(露光率)の分布を求めた.現在の天竜川下流域および遠州灘海岸の汀線付近では,露光率の低い砂が広範囲にわたって分布するが,遠州灘東端の御前崎付近の汀線付近や,天竜川河口付近の竜洋海岸の沖合(水深20m付近)には露光率の高い砂が存在する.侵食問題が顕在化する以前には堆積粒子は天竜川での運搬中に露光し,遠州灘全体にわたって露光率の高い砂が分布していたが,天竜川下流~河口付近での侵食の顕在化に伴い,過去に埋積されてOSL信号を再獲得した砂が再移動を始め,河口付近から遠方に広がりつつあると考えられる.

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© 2016 日本第四紀学会
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