2016 年 55 巻 4 号 p. 193-196
現在,日本で実施されている防災教育は,もっぱら災害後の対応方法に焦点が当てられている.しかし,これだけでは十分と言えない.災害を回避するための教育にもっと力を入れるべきである.周知のように,もっとも有効な防災・減災対策は,災害を受けにくい安全な場所で暮らすことにある.そのためには,住民自身がその地域の土地条件を知り,地形や地盤性状に合わせて土地利用を行う必要がある.地域の地形と地盤の特徴を学ぶこと,これが小論で提唱する「もう一つの防災教育」であり,今後,大いに推進すべき内容である.それをより効果的に実施するためには,次の点を入れるとよい.1)災害の種類ごとにメニューを用意すること,2)地盤の形成史を明らかにし,危険箇所を示すこと,3)古地図の活用,4)分かりやすい内容の小冊子を作成し,活用すること,5)産官学が連携して進めること.