2017 年 56 巻 3 号 p. 67-79
日本では2008年からジオパーク活動が急速に広がっていったが,ジオパーク活動の目的の一つである地質遺産の保全は十分に行われてこなかった.地球科学の分野において地質遺産の保全に関する議論は十分とはいえず,各地で実践を進める際に学術情報の提供などは不十分であった.日本第四紀学会は,遺跡や地形,露頭の保護・保全に関する取り組みを重ねてきた歴史があり,学会としてその意義を認識している.地質遺産の保全に関して議論を深めることは,持続可能な発展に対する地球科学の貢献の一つである.多元的かつ学際的な第四紀学の特性を活かして,今後,地質遺産の保全についての議論の場を作り出していく必要がある.