2018 年 57 巻 6 号 p. 175-195
沿岸域の堆積物を用いた過去数百~数千年という比較的新しい時代を対象としたパレオ研究は,環境や生態系の長期動態とその現状を理解するという点で,今後も第四紀学の発展に重要な役割を果たすことが期待される.ここでは,これまで筆者と共同研究者が行ってきた豊後水道における海洋の温暖化や,豊後水道・別府湾における沿岸域海洋生態系の十年規模変動,イワシ類個体数の長期変動の3つのトピックを紹介し,環境や海洋生態系の長期変動に対する我々の理解が沿岸域のパレオ研究によってどこまで進んだか,どのようなパレオ研究が今後求められるかについて述べる.