第四紀研究
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論説
赤水の滝の形成過程から考える大規模土石流が安倍川上流域の地形に与えた影響
白井 正明宇津川 喬子渡辺 万葉
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2020 年 59 巻 1 号 p. 17-29

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抄録

静岡県安倍川上流域では,1707年の宝永地震の際,大谷崩の大規模崩壊により発生した土石流堆積物が谷を埋めたとされる.土石流堆積物の分布と礫の配列から,大規模崩壊前の安倍川の谷は山地内を穿入蛇行しており,その谷が土石流堆積物に埋積された結果,安倍川の水流が一時的に谷底との高度差を失った頁岩の尾根を越えてショートカットし,赤水の滝の原型が形成されたことを明らかにした.赤水の滝以外にも安倍川上流部にいくつか存在する谷の狭窄部は,土石流堆積物によって安倍川谷が埋め立てられたことによって,流路が元の谷軸とは大きくずれ,そのまま基盤の頁岩斜面を下刻したために形成されたものである.また堆積物の記載と地形断面図の検討の結果からは,赤水の滝の約500m下流では,大規模土石流が既にハイパーコンセントレイテッド流に遷移していたと推測される.

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