第四紀研究
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播磨灘表層堆積物の花粉分析
花粉組成と現存植生の比較
松下 まり子
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1981 年 20 巻 2 号 p. 89-100

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抄録

(1) 播磨灘表層堆積物中の花粉・胞子組成と現存植生を比較するために, 花粉・胞子組成率と周辺植生の優占する面積比 (土地利用面積比) から Rrel-values を算出した.
(2) 優占樹種の Rrel-values は, Pinus 1.98, Cryptomeria・C-T型0.64, Fagaceae 0.27となり, Pinus は過大に, Cryptomeria・C-T型, Fagaceae は過小に表現された.
(3) 播磨灘表層堆積物中の花粉・胞子組成は, 木本花粉が67.0%と高率で, 中でも Pinus 花粉が40.0%を占めている. 一方, 草本花粉, シダ胞子は, それぞれ6.9%, 4.5%であった.
(4) 花粉・胞子は灘全域で検出されたが, 各調査地点で, 花粉・胞子の量と組成に差異が認められ, これらの分布から, 海域に搬入された花粉・胞子は, 主に北部から中南部へ運搬されることが推定できる.
(5) 草本花粉の比率は北部沿岸海域で高率であった. シダ胞子は灘全域でほぼ均一に分布した. 一方, 木本花粉は北部沿岸海域で低率, 沖合に出るに従って高率となった. 中でも Pinus 花粉にこの傾向が強い. これらの分布の差異は, 主に, 花粉・胞子の搬入経路, 生育地からの距離と花粉・胞子の浮遊力の差によるものである.

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