第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
播磨灘表層堆積物の花粉分析
内海域における花粉・胞子の動態
松下 まり子
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 21 巻 1 号 p. 15-22

詳細
抄録

(1) 播磨灘表層堆積物の花粉分析の結果, 花粉・胞子は灘全域で検出されたが, 乾泥1g当たりの花粉・胞子数は, 明石海峡, 鳴門海峡, 備讃瀬戸を通過する潮流の影響を受ける海域で100×102粒以下と少なく, 一方中南部および北西部の潮流の影響をほとんど受けない海域で200×102粒以上となっている.
(2) 総花粉・胞子数の分布は堆積物の物理的特性である微細粒子率, 含水率, 比重の分布傾向と一致する. また, 総花粉・胞子数の対数値とφ6以上粒子の比率との間には高い相関が認められ (R=0.85), これらのことから, 花粉・胞子はおよそ16μm以下の微細粒子と挙動を共にする.
(3) 花粉・胞子の分布から, 花粉・胞子は主に恒流によって灘北部から中央部へ運搬され堆積することがわかる.
(4) Pinus, Cryptomeria, Fagaceae 花粉は総花粉・胞子の分布とほぼ一致するが, Pinus 花粉ではさらに南部沿岸と淡路西淡町沖に分布がみられる. Abies, Tsuga 花粉は西部海域に多かった. Gramineae 花粉は北部沿岸海域で多数検出された. シダ胞子は灘全域でほぼ均一に分布した. これらの分布決定の主要因は, 花粉・胞子の搬入経路と浮遊力である.

著者関連情報
© 日本第四紀学会
前の記事 次の記事
feedback
Top