第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
中国の早期旧石器
黄 慰文
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 28 巻 4 号 p. 237-242

詳細
抄録

中国の早期旧石器に関して, 遺跡の地理的分布, 堆積物の型, 動物化石群と年代などに基づいて, 石器の伝統的製作技術について論じる. 中国では15以上の地点から早期旧石器が発見されている. それらの堆積物は3種類-河成・湖成・洞穴成堆積物である. 前期から中期までの更新世に, 中国北部には3動物群があった. その生存期間と生活様式は互いにまったく異なっていた. 中国南部には2動物群が生存した. 中国北東部の前期更新世の状況は, 必ずしも明確にはなっていないが, 中期更新世に存在した動物群は中国北部に見出されたものとほぼ同様である. 中国の早期旧石器の年代決定は, 主として, 化石層序学的方法によるが, 近年, 古地磁気法・同位体法も併用されている. 中国の早期旧石器は単一の技術伝統による製作物より成るものではなく, チョッパー・チョッピング・トゥール複合物として一括するのは難しい. ハンド・アックスを含む多数の石器の存在は MOVIUS (1944) の「両種文化理論」3)に異議を申し立てる根拠を与えている.

著者関連情報
© 日本第四紀学会
前の記事 次の記事
feedback
Top