第四紀研究
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黒潮域における最終氷期以降の環境変動
大場 忠道安田 尚登
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1992 年 31 巻 5 号 p. 329-339

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抄録

四国沖のピストン・コア (KT-89-18, P-4) に含まれる有孔虫化石 (浮遊性4種と底生2種) の酸素同位体比測定と底生有孔虫の群集解析を行った. また, P-4コアで得られたδ18Oカーブを, すでに公表されている日本列島太平洋側の3本のコアのδ18Oカーブとともに, 深海底コアの標準的δ18Oカーブと比較して, 最終氷期の約3.4万年前以降の黒潮域の環境変遷を考察した. P-4コアの底生有孔虫殻のδ18Oカーブは3.0~1.3万年前に標準的δ18Oカーブからずれており, 薄い18O濃度をもつ海水が供給されていたと考えられるが, この時代の海底には貧溶存酸素でも生存可能な底生有孔虫群集が卓越する. その薄い18O濃度をもつ海水は北方から供給されたことが, 4本のコアの浮遊性有孔虫殻のδ18O値から推定される. すなわち, 最終氷期の日本列島南岸は, 現在の三陸沖と同様に混合水塊とその下層の親潮潜流が南下しており, 黒潮前線は1.4万年前に四国沖を, 1.3万年前に遠州灘沖を, 1万年前に房総半島沖を北上したと考えられる.

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