第四紀研究
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Aso-4火砕流に焼かれた巨木
佐賀県上峰町で出土した後期更新世樹木群
下山 正一渡辺 一徳西田 民雄原田 大介鶴田 浩二小松 譲
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1994 年 33 巻 2 号 p. 107-112

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抄録

佐賀県三養基郡上峰町堤の八藤遺跡において, Aso-4火砕流堆積物中から3本の巨木を含む多数の樹木群が出土した. すべての樹木は, 表面あるいは全体が炭化しており, 火砕流堆積物中には炭化木から派生する「煙の化石」が随所にみられたことから, これらはAso-4火砕流によって倒され, この場で焼かれたものであることが判明した. また, 火砕流堆積物の直下には森林古土壌とともに, 多くの樹根が発見された. このような事実は, 巨大火砕流災害の具体的証拠を示すものとして重要であるばかりか, Aso-4噴出当時の森林植生を直接復元する上でも重要である. また, 巨木は表面のみが焼かれて炭化しているが, 内部の保存は良好である. 樹木の枯死年代はAso-4火砕流の噴出年代と一致するとみられ, Aso-4によりこれらの樹木の年代決定が可能である. さらに, これらの樹木は当時の古環境やAso-4火砕流の性質を知るための分析用試料として価値が高い.

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