第四紀研究
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11.5万年前から5万年前にかけてのGloborotalia truncatulinoides(d'Orbigny)の左巻き個体の優勢な層準
北西太平洋域での最も新しい化石層位学的事件
徐 学東木元 克典尾田 太良
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1995 年 34 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

浮遊性有孔虫の一種であるGloborotalia truncatulinoides(d'Orbigny)の左巻き個体は,その右巻きの個体に比べると現在の世界の海洋での生息分布が限定されている.北西太平洋域の表層堆積物中でも,左巻き個体はわずかに産出するだけである.しかしながら,北西太平洋から得られた3海域の海底堆積物中で,左巻き個体が右巻き個体と急激に入れ替わり,優勢になる層準が存在することが今回確認された.このイベントは,安定酸素同位体比曲線に基づいて,およそ115,000年前から50,000年前までであることが判明した.65,000年間のこの種の左巻き優勢の期間は,北西太平洋中央水塊と北太平洋中層水の水柱で何らかの特徴的な変化を反映している可能性を示唆している.いずれにしても,G.truncatulinoidesの左巻き個体が優勢な層準の下限(11.5万年前)とその上限(5万年前)は,北西太平洋域の過去30万年間において最も若い基準面として有効である.

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