1950年頃にLibby(1955)によって開発された14C年代測定法は,現在,地質学,地球科学,環境科学,考古学,文化財科学などさまざまな分野で利用されている.この45年の歴史をもつ放射能測定(14Cの放射壊変で放出されるβ線を検出し,14C濃度を知る方法)による14C年代測定法に対し,加速器技術を取り入れた新しい14C年代測定法(加速器質量分析法)が約15年前に開発され,現在全世界で活躍している.
ここでは,名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計を用いた14C年代測定の現状を概観し,測定される14C年代値の信頼度をさらに向上するための検討課題について,すなわち,試料の採取,試料調製,加速器質量分析法による14C濃度測定などの14C測定上の問題,および14C濃度から14C年代値の算出,その暦年代への較正に至るデータ処理上の問題点について議論する.さらに,14C年代測定法と他の年代測定法との比較について紹介し,タンデトロン分析計の利用の実情と将来計画について概説する.