第四紀研究
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第四紀の黒曜石・テフラ中水和ガラスを用いたITP-FT年代測定に関する基礎実験
北田 奈緒子弘原海 清升本 眞二
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1995 年 34 巻 4 号 p. 279-288

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抄録

黒曜石やテフラ中の水和ガラス片に生成したフィッション・トラックは,常温下でも自発トラックが少しずつ短縮するフェーディングを受ける.フェーディングを受けた試料を用いて年代測定をすると,実際より若いみかけの年代値が求まることになる.このフェーディング効果を補正し,本来の生成年代を測定する方法にITP-FT(Isothermal Plateau Fission Track)法(Westgate,1989)がある.これは,一定温度で一定時間の加熱処理を行ない,平均トラック長径の一致をもってプラトーの認定を行なって年代を求める方法である.われわれは,このITP-FT法を日本のテフラの年代測定に適用することを目的に,165℃で黒曜石・テフラ中水和ガラス試料を用いた加熱処理実験を行なった.この実験は,1.プラトーへの到達時間と安定度,2.加熱時間の増加にともなうトラック密度と平均トラック長径の変化を明らかにすることを目的とする.実験では,自発トラック計数用と誘発トラック計数用の2つの試料を用意し,加熱時間の変化にともなうトラック密度と平均トラック長径の変化を観察した.この結果,165℃で5日間以上の加熱処理を行なうと,安定したプラトーになることが明らかになった.さらに,自発トラック/誘発トラック密度比が一定になるプラトー相より,自発トラックと誘発トラックの平均トラック長径の一致より導かれるプラトー相の方が,より限定性の大きいプラトーであることがわかった.以上の結果より,165℃の加熱処理を行なってITP-FT年代を求める場合には,5~10日以上の加熱処理を行ない,平均トラック長径の一致をもってプラトー到達の判定を行なうのが適切である.

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