岩手県夏油川扇状地において,河成段丘構成層に挾在する村崎野軽石(6~5万年前降下)の堆積高度,およびその上下の堆積物を検討し,河谷の埋積期に関する考察を行った.
扇央部および夏油川北西部における河成段丘面下には,村崎野面(約9万年前離水:渡辺,1991)を掘り込んだ埋没谷が伏在しており,金ヶ崎面(約2万年前離水)の構成層はその谷を埋積しながら堆積している.谷の埋積は村崎野軽石の降下以前にすでに開始されており,その埋積は金ヶ崎面の離水する最終氷期後半に終了する.本地域の堆積段丘である金ヶ崎面の形成は,渡辺(1991)が指摘したような最終氷期後半の最寒冷期のみに対応するのではなく,少なくとも約6~5万年前にはその形成が始まっていたことが明らかになった.