1995年兵庫県南部地震による被害は,六甲山地と大阪湾に挾まれた平地の中の帯状の地帯で,特に著しい.この被害集中地帯は,低層建物の被害率が急に大きくなる境界に挾まれている.また,この境界が直線的に分布するなどの特徴がある.このような被害分布に関する地下地質構造について,反射法弾性波探査および重力探査を実施し検討した.反射法弾性波探査の結果から,平地に断層が伏在することが明らかになった.また重力探査の結果から,基盤の大きな落差が平地に分布し,その一部が伏在断層となっていると推定できる.この平地の中の基盤の大きな落差の位置は,被害集中地帯の北側の境界と一致する.そして,その一部は,菊池(1995b)による震源域の推定位置とほぼ一致する.被害分布には,地層の不連続面である断層破砕帯などが震動の伝播に大きく影響した可能性がある.一方,伏在断層によって,地質構造が平坦でなく不整形をなし,震動が集中した可能性がある.さらに,海側に厚い堆積層の分布をもたらし,震動が増幅するなど,震動の分布に密接に関係したことが考えられる.これらのことから,基盤の大きな落差を伴う伏在断層の存在が,今回の被害に密接に関係していると推定できる.