日本海秋田沖で採取された2本の海底コアについて,浮遊性有孔虫殻の酸素・炭素同位体比,有機態炭素・全窒素量,その元素比およびそれらの炭素・窒素同位体比を測定し,約3万2千年前以降の海洋環境の復元を試みた.その結果,これら7つの分析値は日本海の環境変化,特に日本海に流入する水塊の変化と密接に関連して変動していることがわかった.特に,これまで日本海の堆積物について分析が行われていなかった窒素同位体比も,古環境解析の有力な指標となることが判明した.また,秋田沖と隠岐堆のコアを比較すると,両者の岩相や浮遊性有孔虫殻のδ18Oカーブが対比可能であることから,両海域は共通した環境変化を経てきたことが示された.一方,有機物の炭素同位体比やC/N比から,秋田沖のコアは隠岐堆のコアよりも陸源有機物の影響を強く受けていることもわかった.