第四紀研究
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生駒西麓(東大阪市)産の縄文土器の胎土材料
断層内物質の可能性
藤根 久小坂 和夫
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1997 年 36 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

生駒山地西麓地域(東大阪市河内地域)から産出する縄文時代後期および晩期の土器の中には,その胎土が暗褐色~茶褐色を呈し,角閃石類を多量に含むという特徴を有する土器群があることが知られている.これらの特徴を有する土器は,“河内の土器”と一般的に呼称されており,他地域の土器とはもちろん,この地域のほかの土器とも容易に識別される.
これらの土器について,土器薄片を作成し,偏光顕微鏡下において観察と記載とを行った.その結果,(1)これらの胎土中の粒子の大きさ分布は5μmから250μmの範囲で,破砕物が一般的に示すフラクタル性(スケーリング則)を有すること,(2)粘土の質・量とも断層内物質の一般的特徴を有すること,(3)粘土は一般的に用いられていたものとは異なり,接着性が非常に高い特異なものであることが明らかになった.さらに,鉱物・岩石片からなる粒子には,破片状の尖った外形を呈するものが多く,断層岩に特徴的な粒内微小断層や微角礫状組織あるいはカタクラサイト状組織を呈するものもあり,顕著な不連続的波動消光や双晶面のたわみ・キングバンドや機械的双晶という変形岩・断層岩を特徴付ける組織が多いこと,が明らかになった.以上のような土器胎土の特徴から,その材料として断層内物質が用いられた可能性がきわめて大きいと考えられ,胎土材料としてほかの材料を考えることは困難である.その産地としては,岩石学的・地質学的特徴から生駒山地西縁を南北に走る生駒断層の破砕帯が最も可能性が高いものとしてあげられる.

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