第四紀研究
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群馬県烏川中流域のテフラ層中にみられる液状化現象とその意義
大塚 富男高浜 信行中里 裕臣野村 哲
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1997 年 36 巻 2 号 p. 123-136

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抄録

群馬県烏川中流域における更新世末~完新世に降下した厚いテフラ層中で,約2万年前以降に計4回の液状化跡を確認した.それらは新しい順に,1108年以後1783年以前,1万年前より新しい時期,約1.7万年前,2.1万年前から1.7万年前の間である.最も新しい1108年以後の液状化跡に対応する古地震の文書記録は確認されていない.液状化した物質はローム層と黒色土壌層で,それぞれ上位の浅間起源の軽石層に貫入している.
液状化による変形には,地震時・液状化層の間隙水圧上昇(液状化発生~主段階)による吹きあげにともなうものと,震動後・液状化層の減圧(液状化終息段階)による引きこみにともなうものが明確に識別できる.これまで,引きこみ現象を明確に認識した報告はみられない.しかし,野外で観察できる液状化跡は,その最終形態である.したがって,液状化の認定には吹きあげ-引きこみ現象を総合的に観察することが重要である.
テフラ層中には,本報告で記述した液状化をはじめ,多様で豊富な地質情報が記録されている.テフラ層の時間面指標としての有効性を積極的に活用した,さまざまな地質情報の読みとりが,第四紀学の内容をより豊富なものにするであろう.

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