第四紀研究
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房総半島南部の完新世津波堆積物と南関東の地震隆起との関係
藤原 治増田 富士雄酒井 哲弥布施 圭介齊藤 晃
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1997 年 36 巻 2 号 p. 73-86

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抄録

相模湾周辺では,完新世を通じて巨大地震が繰り返し発生したことが,完新世の海成段丘や歴史地震の研究から知られている.しかし,完新世の地震を示す津波堆積物などの地質学的な証拠は,ほとんど知られていない.
完新世の3回の地震隆起に対応する津波堆積物を,房総半島南部の館山市周辺に分布する内湾堆積物から初めて見いだした.これらの津波堆積物は,館山市周辺で広域に追跡できる.津波堆積物は,基底が侵食面を示し上方へ細粒化する砂層や砂礫層からなり,貝化石片や木片を多量に含む.貝化石は,内湾泥底と沿岸の砂底や礫底に住む種が混合しており,海底の侵食と再堆積が生じたことを示す.また,陸側と海側への両方の古流向が堆積構造から推定される.
3枚の津波堆積物は,それぞれ約6,300~6,000yrs BP,4,800~4,700yrs BP,4,500~4,400yrs BPに堆積したことが貝化石の14C年代値から明らかになった.最下位の津波堆積物は,沼I段丘,野比I段丘の離水と年代が一致する.また,中位と上位の津波堆積物は,それぞれ野比II段丘,沼II段丘の離水と年代が一致する.調査地域では,上述の津波堆積物と類似した堆積相を示す砂層や砂礫層が,約7,400~3,600yrs BPの間に100~200年に1枚の割で堆積している.これらの砂層や砂礫層の一部は,沼段丘上に分布する離水波食棚群(茅根・吉川,1986)に対応する津波堆積物の可能性がある.

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