京都盆地に分布した巨椋池の堆積物について,花粉化石組成の変化における人為的影響のあらわれかた,およびその層準について検討した.その結果,マツ属が漸増するなかで,イネ属が増加し,アカガシ亜属が急激に減少する層準が明らかになった.京都盆地付近における従来の報告と合わせると,イネ属の増加は弥生時代後期頃,アカガシ亜属の急激な減少は平安時代以降鎌倉時代までを示す可能性が示唆される.このことは,火山灰や14C年代測定用の試料などが得にくい状況では,花粉化石組成に人為的影響の出現し始める層準が,歴史時代の相対的な時間軸の一つとして利用できる可能性を示している.