第四紀研究
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最終氷期最盛期頃の植生の空間構造
南木 睦彦
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1997 年 36 巻 5 号 p. 301-308

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抄録

植生の空間構造を復元するには,埋没林や自生泥炭で,現地性の高い木材化石や大型植物化石から低地の植生を復元し,花粉化石だけが普通に産出する分類群は山地に生育していたとする手法が有効である.この手法を用いて最終氷期最盛期頃の植生を復元すると,兵庫県板井寺ヶ谷遺跡では,低地にはカヤツリグサ科やミズバショウなどが生育する湿地にトウヒ属バラモミ節,カバノキ属ハンノキ属などの小林分がある.一方,山地にはヒメコマツを含むマツ属単維管束亜属やコナラ属コナラ亜属が生育していたことがわかった.宮城県富沢遺跡では,カヤツリグサ科の草原にカラマツ属やトウヒ属が生育する低地と,マツ属単維管束亜属,ハシバミ属などを含む山地の植生が復元された.当時,各地で草原が拡がったことは間違いないが,その規模には議論がある.植生の構成種は,生理・生態・形態を氷期・間氷期の変動の中で大きく変化させてきた.現生種の生理・生態をそのままあてはめるわけにはいかない.植物食の可能性もあるので,注意を要する.

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