これまで,縄文文化には複数の栽培植物アサ(アサ属Cannabis),エゴマ(シソ属Perilla),ヒョウタン(ユウガオ属Lagenaria),クリ(クリ属Castanea)等の存在が知られていた.しかし,最近のフローテーション法の採用による炭化植物種子の検出,イネのプラントオパール抽出などの考古植物学的な調査によれば,縄文文化前期~中期前半の層準から東日本ではヒエ(Echinochloa)が,西日本にはイネ(Oryza sativa)が検出される.これらイネ科Gramineae植物の出現や文化的な背景には,まだ不明の部分が多い.しかし,ヒエは東日本で栽培化が行われた可能性があり,イネはアジア大陸とその周辺部から渡来してきた,と考えられる.また,縄文時代に存在するといわれていたリョクトウVigna radiata (L.) Wilczekについては,まだ確実な資料は発見されていない.