第四紀研究
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最終氷期における気温変動
Dansgaard-Oeschgerサイクルとハインリッヒ・イベント
藤井 理行
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1998 年 37 巻 3 号 p. 181-188

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抄録

グリーンランド氷床のコアの安定酸素同位体組成の解析により,Dansgaard-Ocschgerサイクルと呼ばれる氷期における24ものinterstadials(亜間氷期)が明らかとなった.interstadialsは,数十年間で5~7℃の急激な温暖化とその後500~2,000年の緩やかな寒冷化で特徴づけられる気温変動である.また,Dansgaard-Oeschgerサイクルを束ねたBondサイクルと呼ばれる気温変動は,ローレンタイド氷床から北大西洋への氷山群の流出(ハインリッヒイベント)後に急激な温暖化で始まることが,海底コアとの対比で明らかとなった.本論では,氷期における北大西洋深層水(NADW)の消長による海洋での熱塩循環の変動が,地球規模での気候を支配してきたことを示すとともに,気候システムには2つの安定なモードがあることを指摘する.さらに,現在進行中の温暖化に伴う降水量の増加により,北大西洋海域の塩分濃度が低下し,熱塩循環が止まり,現在とは別の気候モード(寒冷化)が引き起こされる可能性を紹介する.

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