第四紀研究
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兵庫県赤穂平野における完新世中期から後期の相対的海面変化
佐藤 裕司加藤 茂弘
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1998 年 37 巻 4 号 p. 325-338

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抄録

赤穂平野で得たコア堆積物を対象に,テフラ分析と,コア堆積物中に含まれる貝化石や木片の加速器質量分析(AMS)法による14C年代測定を行い,その堆積年代を明らかにした.また,堆積物中のイオウ含有量と珪藻遺骸群集の分析から堆積環境を明らかにした.そして,これらの結果にもとづいて,本地域における約6,800yrs BP以降の相対的海面変化を以下のように復元した.
(1)約6,800~5,500yrs BPには,海面は現海面よりも低く,-0.75~-1.50mの間にあった.(2)約5,500~4,700yrs BPには,海面は上昇して現海面に達したか,それをやや上回ったと考えられる.(3)約4,700~3,800yrs BPには,海面は若干低下した.(4)約3,800~3,200yrs BPには,海面は+0.50mまで上昇した.(5)約3,200~2,500yrs BPには,現海面下に及ぶ海面低下がみられた.(6)海面はその後上昇し,約2,500~1,500yrs BPには現海面に達し,約1,500~600yrs BPには現海面上に及んだ可能性がある.
本地域では,約6,000~5,000yrs BPの海面高度は標高-1~0m程度と推定される.一般に高海面期とされるこの時期の相対的な低海面は,本地域の沈降運動を示唆する.

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