第四紀研究
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房総半島と三浦半島の完新統コアに見られる津波堆積物
藤原 治増田 富士雄酒井 哲弥入月 俊明布施 圭介
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1999 年 38 巻 1 号 p. 41-58

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抄録

内湾(溺れ谷)の泥底に砂や礫を再堆積させるイベントが,完新世の三浦半島と房総半島南部で繰り返し発生したことが,沖積低地で行ったボーリング調査によって明らかになった.これらの再堆積層は,上方へ細粒化する淘汰の悪い泥質砂層や砂質礫層からなり,他生の貝化石や粘土礫を多く含み,生痕が発達し,自生の貝化石を含む泥層を削り込んで覆う.これらの再堆積層は,3ヵ所の沖積低地で掘削した6本のボーリング・コアで認められ,加速器質量分析計(AMS)による79個の14C年代測定値に基づいて,近似した年代をもつ7つの層(下位からT1~T7)にまとめられる.
T3~T7は,水深10~20mの内湾中央部に堆積したものであるが,岩礁などに棲む貝化石を泥底の群集と混合して含む.また,貝化石は下位層と14C年代値が逆転するものがある.T1,T2は上述した異常堆積物と類似した堆積構造や化石を含み,特に貝形虫化石群集は外洋水が内湾奥の汽水域へ流入したことを示唆している.
T1~T7の堆積構造,化石の種構成,14C年代値は,海底および海岸の侵食と削剥された堆積物の湾央への運搬が強い流れに起因することを示している.さらに,T3~T7は,相模トラフ周辺で発生した巨大地震に伴う海岸段丘の離水時期と年代が近似する.
以上のことから,T1~T7は海底地震に伴う津波で形成されたことが強く示唆される.これらの津波は,過去約10,000年の間に,400年から2,000年の間隔で発生した.

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