第四紀研究
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過去10,000年間の相模トラフ周辺での古地震を記録した内湾堆積物
藤原 治増田 富士雄酒井 哲弥入月 俊明布施 圭介
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1999 年 38 巻 6 号 p. 489-501

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抄録
相模トラフ周辺で過去1万年間に発生した地震イベントを,房総半島南部と三浦半島に分布する4つの沖積低地の内湾堆積物から検出した.
堆積相解析の結果,基底に侵食面をもち,上方へ細粒化する砂層や砂礫層によって,自生の貝化石を含む均質な泥質層の堆積が中断されるイベントが,各沖積低地で10回以上識別された.また,一部の砂層では,海と陸の両方向の古流向が見られる.内湾堆積物に含まれるこれらの粗粒堆積物は,いわゆる“イベント堆積物”である.
タフォノミーの視点からの化石群集の分析によって,イベント堆積物の供給源や運搬・堆積プロセスが推定された.イベント堆積物は,内湾泥底と岩礁など,通常は共存しない異なる環境に棲む貝化石群集が混合しており,湾周辺からの堆積物の取り込みと内湾底への再堆積を示す.湾奥の汽水域や湾中央で堆積した泥層に挾まれる2枚のイベント堆積物は,外洋性の貝形虫化石を多量に含み,外洋水が湾奥に侵入したことを示す.これらは津波堆積物の可能性がある.
137個の高密度の14C年代測定によって,7枚のイベント堆積物が相模湾沿岸で広域に追跡され,乱泥流が南関東沿岸の広域で同時に繰り返し起きたことが推定された.5枚のイベント堆積物は,南関東に分布する完新世海岸段丘の離水と近似した年代を示し,津波起源であることが強く示唆される.
化石群集から復元した古水深変動から,イベント堆積物を挾む2つの層準で急激な海面低下が見いだされた.このイベントは海底の地震隆起と地震に伴う津波を示すと考えられる.
地層から地震イベントを検出することは,古地震研究に有力な情報を提供し,地震テクトニクスの新たな研究方法として貢献すると考えられる.
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