剣山地南西部の温帯混交林域において,過去に生じた植生変化を森林土壌の花粉分析によって調査した.調査区内で採取された2地点の土壌断面には,19世紀後半,明治時代に入り行われたと考えられる大規模な森林伐採によって生じた植生変化が記録されていた.現在,この調査区はモミとミズメが優占するが,伐採の行われる以前では多様な広葉樹を交えたモミ-ツガ林であったと考えられる.2地点の土壌中の花粉分布パターンはいくつかの花粉型で大きく異なっていた.このことは森林土壌の花粉分析によって,細かい面積的スケールでの植生変化を解明できることを示唆している.