第四紀研究
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黒曜石石器群に認められる被熱痕跡の生成実験と量的評価
中沢 祐一
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2000 年 39 巻 6 号 p. 535-546

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抄録

遺跡より出土した黒曜石石器の被熱痕跡を明らかにする目的をもって,後期旧石器時代の北海道千歳市メボシ川2遺跡から出土した黒曜石石器を実体顕微鏡を用いて観察した.表面に認められる特徴的なヒビとそれを切って形成されている折れ面に着目し,分類・記述を行った.その結果,表面にはしる曲線のヒビ(1a),表面下にはしる魚のウロコ状のヒビ(1b),格子状の微細なクラック(1c),発泡(2),平坦な折れ面(3a),凹凸のある折れ面(3b)の6形態が識別された.それらが黒曜石石器にどのように組み合わさっているかを量的に把握し,生成時における形態相互の関連性を推測した.識別した形態が被熱痕跡であるかどうかを生成過程から明らかにするため,温度と被熱時間を変数とした室内実験を行った.実験の結果,格子状のクラック(1c)と平坦な折れ面(3a)については実験試料と整合し,温度と被熱時間による実験条件の範囲内で生成されることがわかった.認定された被熱痕跡(1c)に基づき,石器群における被熱率の解釈について,石器群の形成過程と火の利用の観点から,石器の製作・使用・廃棄の脈絡における説明を提示した.

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