化石骨から骨の本質成分であるアミノ酸を抽出し,XAD-2樹脂という吸着ポリマーに通して,周囲の堆積物由来の有機不純物を除去する方法を試み,従来行ってきたゼラチンコラーゲン抽出法との比較を行った.試料とした化石骨は,滋賀県粟津湖底遺跡の第3貝塚から採取された獣骨片である.
XAD-2樹脂処理して得られた化石骨中のアミノ酸集合体抽出成分は,ゼラチンコラーゲン抽出成分に比べて14C年代値は古く,同層から採取された木片の示す年代に近づく傾向を示した.特に,ゼラチンコラーゲンの収率が低い骨試料では,XAD-2樹脂処理されたアミノ酸集合体成分とゼラチンコラーゲン成分の14C年代値の間に約400年の差が見られ,後者の年代は実際よりも若返っていることが示唆された.このことから,保存が良好ではなく,コラーゲン収率が悪い化石骨に対して,今回試みたXAD-2吸着樹脂を用いる方法は,信頼度の高い14C年代値を得るために有効であることがわかった.