第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
南九州テフラ-土壌累積断面における腐植酸Pgの存在形態と生成環境
渡邊 眞紀子小林 孝行
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 40 巻 1 号 p. 19-28

詳細
抄録

阿蘇4,阿多テフラを含む約10万年相当の南九州テフラ-土壌累積断面において,腐植酸緑色画分Pgの分布とテフラ年代を関連づけて検討したところ,酸素同位体比曲線とよく対応する周期的な変動が見られた.無機コロイド鉄を分析した結果,Pgはヘマタイト的鉄とではなく,ゲータイト的鉄もしくは非晶質鉄のフェリハイドライトとともに存在していることが明らかとなった.また,Pg吸収強度の強弱の振れと全分析によるシリカ・アルミナ比,アルミナ・可溶性塩類比との対応が見られた.これらのことから,Pgは強い表層風化作用,土壌化作用をうけた層位の下位層において移動・集積,もしくは外生菌根菌の代謝産物として根系付近で生成・残留した可能性があることを指摘した.生物の代謝産物を起源とし,テフラ土壌累積断面に残留する緑色色素の含量をPg吸収強度として検出することにより,溶脱作用の程度に反映された過去の気候環境を推定することができると考えられる.

著者関連情報
© 日本第四紀学会
前の記事 次の記事
feedback
Top