2001 年 40 巻 2 号 p. 85-95
1997年4月に潮止めされた有明海諫早湾の干拓調整池内18定点において,潮止め前1回(1997年3月)と潮止め後2回(1997年5月,8月)実施された採泥調査で得られた貝類標本を同定した.潮止め前,同調査定点ではカワグチツボ・コケガラス・サルボウガイ・シズクガイなど15種の貝類の生息が確認された.これらの種は,潮止め後1ヵ月までは変わらず生息していたが,1997年8月にはほぼすべてが死滅していた.しかしヒラタヌマコダキガイは,潮止め前にはまったく見られなかったにもかかわらず,潮止め後に本明川河口付近で見られはじめ,1997年8月には調整池のほぼ全域で殻長1cm前後の小型個体が非常に密集して生息することが確認された.ヒラタヌマコダキガイは中国大陸からの外来種とされ,1992年に有明海で初めて生息が確認されたが,すでに佐賀県の更新統から本種の化石小型個体が密集して産出することが確認されており,今後の化石記録の再検討が必要である.