境峠断層は,飛騨山地南部を北西-南東方向に走る長さ約30kmの断層で,さらに木曽山地北部に延長する境峠-神谷断層の北西部を構成している.この境峠断層のほぼ中央部において見いだされた中期更新世の段丘面を切断する逆向き低断層崖と,完新世の断層活動を示す露頭を記載した.この露頭では,基盤の花崗岩破砕帯中のカタクレーサイトや断層ガウジには,左横ずれの変位センスを示す非対称複合面構造組織が発達する.破砕帯中に取り込まれ,被覆層から由来する剪断変形した腐植質土壌の14C年代とあわせて,境峠断層は完新世を含む第四紀後期に活動している左横ずれ活断層であることが確認された.