40 巻 (2001) 3 号 p. 267-274
房総半島の地形から読みとれる中期・後期更新世の古海水準や地殻変動について,2つの視点から考察した.半島東部の夷隅川下流と南部の大房岬における酸素同位体ステージ3の海成段丘の高度と年代資料から,両地域の隆起速度をそれぞれ2.1m/kyと1.8m/kyとすると,ステージ3の古海水準はいずれも-30~-35mであった.これはパプアニューギニア,ヒュオン半島のサンゴ礁段丘から新しく得られた値と比較して,40~50mも高い.また,半島の地表地形の削剥は著しいが,丘陵内を流下する河川の水系は,それが決定された堆積面離水時の地表面勾配を保存するという性質を利用し,北に流下する水系は東西方向に走る上総層群堆積時の葉山-嶺岡隆起帯の運動,北西に流下する水系は下総層群堆積時の北東-南西方向に走る鹿島-房総隆起帯の運動が関わること,また東方に向かう水系は,ステージ5以降に上総層群分布域に生じた東からの湾入の存在を暗示すること,などを推論した.