第四紀研究
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古東京湾の堆積システムに記録された海水準変動とテクトニクス
西川 徹杉本 英也伊藤 慎
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2001 年 40 巻 3 号 p. 275-282

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抄録

約45~7万年前に現在の関東平野一帯で拡大と縮小を繰り返した古東京湾で形成された下総層群では,堆積学・層序学・古生物学などさまざまな角度から堆積システムの発達過程が明らかにされつつある.本論では,古東京湾での堆積システムの発達過程における氷河性海水準変動とテクトニクスの役割に注目して,これまでの研究成果を整理し問題点を検討した.その結果,次のことが明らかとなった.
(1)下総層群を構成する堆積シーケンスは,おもに氷河性海水準上昇期~高海水準期に形成された.すなわち,現在地層として残っている時間の記録はきわめて断続したものであり,従来考えられてきたようなおよそ10万年周期の氷河性海水準変動のすべてを記録しているものではない.(2)下総層群の場合,貝化石群集の特徴に基づいて復元された古環境変化は,必ずしも氷河性海水準変動を直接反映するものではない.(3)構造運動に支配された相対的海水準変動の地域的変化が古東京湾の発生期から埋積末期までの高周波堆積サイクルの発達過程に強く影響を与えていた.

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