第四紀研究
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十勝平野南部における酸素同位体比ステージ5,7,9のテフラ
中村 有吾平川 一臣
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2001 年 40 巻 5 号 p. 373-384

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抄録

十勝平野南部の広尾町新生において,屈斜路羽幌テフラ(Kc-Hb),新生テフラ(Sns:仮称,給源不明),厚真4テフラ(Aafa4)の層序を確認した.これらのテフラは最終間氷期(酸素同位体比ステージ5e)の高海水準からの海退につづいて堆積した扇状地砂礫層の最下部(現海水準高度付近の泥炭層中)に挾在する.大樹町付近では,Kc-HbおよびSnsは酸素同位体比サブステージ5e1の海成段丘面を覆う.したがって,Aafa4,SnsおよびKc-Hbの降下は,最終間氷期の最高海水準から,少なくとも海水準が25m低下した時期で,おそらく酸素同位体比ステージ5dと推定できる.
酸素同位体比ステージ7に堆積した海成砂礫層中には漂着軽石である豊似テフラ(Tyn:新称)が,酸素同位体比ステージ9に堆積した厚い海成砂層最下部には水中堆積した軽石,晩成テフラ(Bns:新称)が挾まれる.これまで未記載のTynおよびBnsは給源火山や広域対比など明らかでないが,酸素同位体比ステージ7,9に関わる諸問題を検討する示標テフラとなる可能性がある.

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