第四紀研究
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中国,蘭州のレス堆積物のルミネッセンス年代測定
塚本 すみ子福澤 仁之小野 有五方 小敏
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2001 年 40 巻 5 号 p. 385-392

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抄録

中国甘粛省蘭州のT2段丘上に堆積しているレス堆積物の年代測定を,赤外励起ルミネッセンス(IRSL)法および熱ルミネッセンス(TL)法を用いて行った.IRSL年代測定においては,ガンマ線照射後に,熱的に不安定なIRSL信号を除去するプレヒートを行うことが不可欠である.今回用いたレス試料に最適なプレヒート条件を設定するため,120℃および160℃でプレヒート実験を行った.この結果,120℃では24時間以上,160℃では1.5時間と6時間の間で照射した試料と未照射の試料の信号強度比が一定(プラトー)に達した.しかし,160℃でプレヒートした試料は,IRSL信号強度がガンマ線照射に対していったんは増加するものの,すぐに減少してしまい,年代測定に必要な等価線量の推定を行うことができなかった.そこで,すべての試料を120℃で96時間のプレヒートを行うことにした.
得られたIRSLおよびTL年代は,厚さ22mのレス堆積物の上位12mでは,1試料を除いて誤差の範囲で一致していた.一方,下位の9mにおいては,IRSL年代がTL年代より若くなった.これは,試料の年代がIRSL年代測定の上限を超えてしまったためと考えられる.年代測定結果より,蘭州のT2段丘上のレスは約6万年前から堆積を開始したと考えられる.また,この間に数回の堆積速度の変化があったことが示唆された.最大の堆積速度を示したのは酸素同位体ステージ(MIS)3にあたる約3万年前であり,MIS2の時期の堆積速度は小さかったと考えられる.

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