第四紀研究
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長者久保・神子柴文化期における土器出現の14C年代・較正暦年代
谷口 康浩川口 潤
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2001 年 40 巻 6 号 p. 485-498

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抄録

日本列島東北部を中心に分布する長者久保・神子柴文化に土器が出現する.青森県大平山元I遺跡は,最古の土器を出土した遺跡の一つである.大平山元I遺跡出土土器の表面に付着していた煮炊きのコゲとみられる微量の炭化物を試料として,加速器質量分析計(AMS)による14C年代測定を行った結果,12,680±140~13,780±170yrs BPの年代値が得られた.長者久保・神子柴文化よりも相対的に新しい十和田八戸テフラのAMS14C年代が12,380±110~13,080±60yrs BPであることに照らしてもこれは妥当な年代であり,長者久保・神子柴文化期における土器出現の14C年代は13,000yrs BP以前に遡る可能性が強い.INTCAL98を使用して大平山元I遺跡の14C年代を暦年較正すると15,320~16,540cal BPとなる.これは晩氷期の年代域よりもさらに古い.土器の出現は後氷期に起こった人類技術革新の一つと説明されてきたが,極東地域では最終氷期の寒冷な環境下ですでに土器の使用が始まっていたことが確実となった.長者久保・神子柴文化期を縄文時代草創期に含めている現在の時代区分は見直しが必要である.

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