第四紀研究
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北太平洋深海底コア中の石英からみた過去約20万年間の風成塵の変動
岡本 孝則松本 英二川幡 穂高
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2002 年 41 巻 1 号 p. 35-44

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抄録

北西太平洋域には,大陸を起源とする風成塵が大量に降下している.本論文では,中央北太平洋から得られた過去約20万年間を記録する深海底コアNGC59中の風成塵起源の石英の解析を行った.これまでは,複数起源の鉱物からなる海底堆積物から風成塵を正確に抽出することは困難であった.本研究では,風成塵の主要鉱物である石英に注目し,石英の粒度分布と含有量を測定した.海底コア表層の石英の粒度分布は,標準偏差1.28φの対数正規分布を示し,この標準偏差の値は中国のレス堆積物中の石英の値とほぼ同じであった.この結果に基づいて,深海底堆積物中の石英から風成塵石英を分離した.過去約20万年間における風成塵石英の沈積流量は,氷期には間氷期の1.5~2倍に達し,風成塵の起源である中国内陸部で氷期には乾燥化が進んでいたことが示唆された.一方,風成塵を運ぶ偏西風の強さの指標となる中央粒径値は,氷期-間氷期サイクルにおいて有意な変動が見られず,偏西風は大きく変化しなかったことが示唆された.

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