第四紀研究
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桜島火山の噴火史と火山災害の歴史
小林 哲夫溜池 俊彦
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2002 年 41 巻 4 号 p. 269-278

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抄録

桜島火山の歴史時代における4大噴火の噴火災害を概観し,その後に噴火史をもとに,先史時代の噴火災害の歴史についても総括した.桜島火山に特徴的な噴火のタイプとしては,大規模噴火とともに断続的なブルカノ式噴火が認められた.歴史時代の大規模噴火は,1)前兆現象に引き続き,2)プリニー式噴火が始まり,3)火砕流(火砕サージ)を発生させ,4)溶岩の流出で終わる,という推移をたどっている.噴火の後には,5)地盤沈降などが認められた.このような大規模噴火は17回(~19回)発生し,降下軽石はP1~P17と名づけられた.なかでも11kaのP14の噴出量(11km3)は最大であり,南九州一帯に降灰被害をもたらした.上野原遺跡を埋積したP13(1.3km3)はそれに次ぐ大規模テフラであり,遺跡周辺では定住が困難であったと推定された.プリニー式噴火による多量の降灰は田畑や家屋を埋没させるだけでなく,その後数年間にわたりラハールの発生要因ともなっている.特に降灰量が30cm以上の地域では,ラハールが多発している.一方,ブルカノ式噴火では,島外での大規模な土砂災害は発生していないが,島内では降雨時におけるラハールが多発した.火山災害を軽減するためには,ハードな対策のみならず,きめ細かな防災マップの作成や防災教育に力を入れることが必要である.

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