第四紀研究
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岐阜県高富低地湖沼堆積物の花粉分析による最終氷期初期からの植生・気候変遷
加古 久訓森山 昭雄
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2002 年 41 巻 6 号 p. 443-456

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抄録

高富低地には泥質の湖沼堆積物が厚く堆積し,西深瀬でボーリングしたオールコア試料には,阿蘇4(Aso-4),姶良Tn(AT),鬼界アカホヤ(K-Ah)の広域火山灰が挾まれる.最終氷期のMIS5b以降現在に至るオールコア約16mの堆積物試料の花粉分析をもとに,本地域における植生と気候の変遷を論じた.さらにMIS編年との対比を行い,他地域との対比と各時期の植生分布・古気候を考察した.花粉化石群集はTK-X~I帯に分帯された.MIS5bの時期には,アカガシ亜属Quercus subgen. Cyclobalanopsisなどに示される暖温帯広葉樹林が覆っていて温暖湿潤な気候であった.MIS5aの時期には,スギ属Cryptomeria,コウヤマキ属Sciadopitys花粉が優勢となり,湿潤な気候であったことが推定される.MIS4になると,急激な寒冷化になり,マツ科針葉樹林が卓越した.その後のMIS3には,少し温暖化して冷温帯落葉広葉樹林が卓越した.約3.1万年前に再び急激な寒冷化と乾燥化が到来し(MIS2),亜寒帯針葉樹とカバノキ属Betula花粉が増大した.しかし,約1.4万年前には針葉樹花粉は急減し,コナラ亜属Quercus Subgen. Lepidobalanusなど落葉広葉樹林が拡大して温暖化が始まる.後氷期中期にはモチノキ属Ilex花粉が卓越し,約3,000年前からはアカガシ亜属花粉が急増して暖温帯広葉樹林が成立した.太平洋側にある高富低地は,北陸地方とは違って,スギ属・コウヤマキ属が優占して湿潤な気候を示す時期はMIS5aのみであり,それ以外の時期は北陸地方よりも乾燥していたと考えられる.

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