第四紀研究
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誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)による東北北部古代土器の胎土分析
松本 建速
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2003 年 42 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

東北北部地域の8~11世紀の土器胎土と第四紀層粘土を,誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry: ICP-AES)によって分析した.土器胎土の化学組成は,遺跡周辺の第四紀層の粘土の化学成分に類似していた.東北北部地域では,土器胎土や第四紀層の粘土に含まれるCa,Na,Kは,日本海側から太平洋側に向かって系統的に増減していた.これらの元素の含有量の変化傾向は,東北地方の第四紀火山噴出物の場合と類似していた.そして,土器胎土とされた第四紀層の粘土は,周辺の第四紀火山噴出物が起源であると予想した.
長石を構成する主要元素のうち,Ca,Na,Kを用いてK/Na+CaとCa/Na+Kという指標を作った.マフィック鉱物を構成する主要元素のうちTi,Fe,Mgと,粘土鉱物を構成する主要な元素であるAlを用いて,Ti/Al+Fe+Mgという指標を作った.それらの指標の値は,日本海側地域から太平洋側地域へと系統的に変化していた.これらの指標の値から,東北北部地域に関しては土器胎土の産地推定が可能である.
その結果,今回分析された東北北部地域の8~11世紀の土師器は,遺跡周辺で作られたものがそれぞれの遺跡で利用されており,広範囲での流通はなかったことがわかった.

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