抄録
中部山岳域周辺に分布する中・後期更新世テフラに関するこれまでの研究動向を探るとともに,現在残されている諸問題と今後の展望について論じた.本地域の火山で発生したプリニー式噴火による後期更新世テフラおよび同時代の広域テフラについては,すでに層序・分布はほぼ解明されている.しかし,立山DテフラとAso-3については,それぞれ年代や認定について不明な点が多く,飛騨山脈周辺河谷におけるMIS5e前後の気候段丘・氷河消長史の編年に問題を残している.中期更新世テフラの層序・分布については不明な点も多いが,飯縄上樽aテフラ,大町APmテフラ群,上宝テフラなど,最近になり詳細が明らかにされたテフラもある.今後,ローカルなテフラを追跡して層序・分布を明らかにし,応用研究として長期にわたる噴火史や盆地・山地の形成史の構築,堆積物の編年などを進める必要がある.