第四紀研究
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日本列島における更新世後期以降の気候変動のトリガーはなにか?
チベット高原とWest Pacific Warm Water Poolの役割
福澤 仁之斎藤 耕志藤原 治
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2003 年 42 巻 3 号 p. 165-180

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抄録

最近,地球表層環境に強いインパクトを与えて,突然かつ急激なグローバルな気候変動を起こすトリガーについて多くの議論がなされている.とくに重要な発現地として,(1)北部大西洋,(2)南極大陸周辺,および(3)西部太平洋暖水域(West Pacific Warm Water Pool: WWP)があげられ,それらの地域における変動の先行および遅延について,新知見が得られつある.日本列島を含む東アジアの気候変動は,基本的に西部太平洋暖水域の高気圧からチベット高原の低気圧に流れ込む東アジア夏季モンスーンによって強い影響を受けている.水月湖の年縞堆積物における風成塵・炭素フラックスの検討によれば,グリーンランドを含む北部大西洋周辺に比べて,東アジアにおける晩氷期のベーリング期に相当する温暖化時期は1,000年程度先行していることが明らかになった.とくに,水月湖における夏季表層水温の上昇の始まりは18,000~16,000年前であり,それによる基礎生産量の増加も確認された.
一方,南シナ海における海洋堆積物コアには,西部太平洋暖水域に起動された夏季モンスーン活動の活発化イベントが17,000年前から10,000年前にかけて9回も記録されていたが,この活発化イベントも諏訪湖湖底堆積物に降水量の増加イベントとして,ほぼ同時に記録されていた.すなわち,東アジアにおける更新世以降の気候変動のトリガーは,年縞が認められたり,高分解能な14C年代測定が行われた湖沼堆積物による解析から,WWPの水温変化の影響を受け,多量の湿潤大気を東アジア内陸部へ運搬した東アジア夏季モンスーンであったと考えられる.

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