第四紀研究
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中国海南島北部の海岸マングローブ潟における花粉学的研究
表層花粉組成と現生マングローブ植生との関係
毛 礼米王 開発〓 華
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2003 年 42 巻 4 号 p. 247-264

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抄録

中国海南島北部に位置する東塞(Dongzhai)と清瀾(Qinglan)に分布する海岸マングローブ潟の表層から採取した堆積物を花粉分析し,完新世におけるマングローブの変遷史を復元するための基礎資料を得たので報告する.
これらの地域のマングローブが繁茂する潮間帯に,陸域から沖合に向けて6測線(Transects 1-6)の地形と植生の断面を作成し,この場所におけるマングローブの種構成による分帯を試みた.さらに,このうち4測線(Transects 1,3,5,6)について表層堆積物中の花粉分析を行った.その結果から,表層花粉組成と現生マングローブの構成種の関係を考察した.潮間帯におけるマングローブ内の堆積環境とマングローブ種ならびに付随する構成種の分帯の関係を特徴づけるために,表層試料から得たすべてのパリノモルフを同定,集計した.その中には花粉はもちろん,羊歯胞子や識別不能の有機物(おそらくマングローブの生産物)が含まれていた.特にRhizophora,Avicennia,Ceriops,Bruguieraは高率であり,Excoecaria,Aegiceras,Kandelia,Xylocarpusは低率であることから,卓越する花粉組成は現地性のマングローブやそれに付随する植生からのものであり,後背地の植生からのものをわずかにともなうと判断される.測線を通じて,現生の分帯によく似た帯状配列の傾向が読みとれる.したがって,表層の花粉組成はごく限られた範囲のマングローブの影響が強く反映されているものと考えられる.これらのことに加えて,マングローブを構成する種ごとの花粉の出現率を変化させうる要因についても議論した.

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